初対面という感じがあまりしない。前にもどこかでお会いしたような気さくで温かみのある雰囲気を醸し出している。
よく笑い、よく喋り、人の話にも耳を傾ける。次から次へと経営に関する熱い思いが言葉となって伝わってくる。と同時に相手から返ってくる興味ある情報や話題は、しっかりとメモを取り受け止める。手元にある一冊の分厚い手帳の中には、さぞかし経営戦略の知恵が書き込まれているに違いない。
26才で独立して『フレッシュフードモリヤ』を開業させた。一号店の福田町店を皮切りに、次々と出店。今では仙台市内を中心に宮城県内に直営店が19店舗、fc関連(子会社)が13店舗と大きく成長し、地元資本のスーパーとして健闘を続けている。はじめの1〜2店舗の頃が一番楽しかったと当時を振り返る。
「開業以来20年近く、従業員の誕生会をずっと続けています。私の自筆のカードに一輪の花を添えてプレゼント。ご馳走を食べながら夢や今後の抱負などを話します。社員と目的目標を共有するためには、言葉に出してきちんと伝えなければなりません。相手が何を考えているかも、よく聞きますよ。本音で喋り、本気で怒る。これが私の基本姿勢です。簡単明瞭なので社員もわかりやすいと思いますよ」と、笑いながら話す。先入観にとらわれずに部下に仕事を任せる。反面、期待通りの成果が出ない人には厳しい一面もあるのだとか。
社員にとっては、懐が深く、父親のような存在。トップのこうした人柄ゆえに社内は自由で闊達な空気に包まれている。よく入社1〜2年目の従業員に、もう10年くらいこの会社で働いているような気がすると言われるのだそうだ。
地域密着型のスーパー・お客様に選ばれる店づくりをめざす『フレッシュフードモリヤ』だが、今後は仕事を持つ主婦や高齢者のために、簡単でリーズナブルな宅配サービスに取り組みたいと意欲を燃やす。また祖母の介護にあたる家族の苦労を目の当たりにした自身の経験から、高齢者の介護施設の運営にも乗り出した。
「優秀なスタッフを大勢揃えて、より充実したサービスを提供するには、何よりマネージメントが必要であり、基本的には介護事業もスーパーの経営も同じなんですね。やるからには東北でナンバーワン、あらゆるニーズに応えられる介護のデパートのような施設を作りたい」と抱負を語ってくれた。企業ポリシーは『チャレンジ精神』。留まるリスクと前に出るリスク、どちらか選ぶとしたら絶対に後者。一歩踏み出す勇気を持とうと、日々檄を飛ばしているという。
趣味を伺うと、しばらく考えてから「ひとりでブラリと出かけるドライブが好きかな。落ち込んだ時などは、ひとりがいいんです。」「私だって落ち込む時もありますよ」と、茶目っ気たっぷりに笑う守谷さん。強さも弱さも隠さない、人間的な魅力に触れた一瞬だった。