いい物を愛しんで使いたい。また自分の感性に合ったモノを見つけ出し、大切に使ってゆきたい。そんな考えを持つ人々が多くなってきました。
後藤さんはそうした生き方、暮らし方をずっと以前より実践してきたひとなのです。現代美術の作家として、また真面目にモノづくりに取り組む職人さんたちの力強い応援団として、さらに私たちにとってはブランドや流行に惑わされないモノ選びの大切さや視点を学ばせてくれる先生として日々八面六臂の忙しさをこなす多才なひとでもあるのです。後藤さんが仙台大町にある西欧館に「リアルスタイル仙台」というインテリアショップをオープンさせたのは平成十七年のこと。
親子3代、100年にわたり永く使える家具を中心に、照明器具、ファブリック、雑貨、日常使いの作家の器等々、本物が持つ良さにこだわった品々が顔を揃えているステキなお店です。家具はすべて無垢材を使用し、注文を受けてからお客様の名前でつくり始める。すると職人さんたちは使ってくれる方を考えながら、持てる技を精一杯生かし、どんどんと技を磨いてゆく。一方お客様も上質感を楽しみ、よい物を大切に使い続ける豊かさを養ってゆく。創り手と使い手の理想的な絆が「リアルスタイル」の家具を架け橋として生まれてくるのです。
「店の近くにある戦災復興記念館に時々行ってみるのですが、残っている写真などから、戦前の仙台の街並を見ると、立派な西洋建築があったことに驚かされます。価値あるものを壊してしまい、無味乾燥な近代ビルにしているのは残念な気がします。歴史と風土の関係は断絶させてはいけないと思うのです。仙台は伊達藩の城下町として栄え、その後は第二師団があって軍都としての時代もあった。現在は大学があり学都としての顔もある。先人たちが築いてきた街の歴史的な風情を自ら壊してしまうのはあまりにもったいない話です。振り返ったら何も残っていなかった。そのような状況にはしたくないものです。」と語る後藤さんだ。
山形市の出身である。いま「山形カロッツェリアプロジェクト」のメンバーとして庄内温海地方の伝統的古代布「しな織」と鶴岡の絹織物のデザイン開発に携わっている。このプロジェクトはメーカーや職人が持つ優れた技術力を新しいデザインで生かし、世界に向けて発信し、また逆輸入もする。そんな新しいモノづくりによる産業再生の研究会なのである。自ら役員をし、育て上げた東京青山にあるインテリアショップを辞職して仙台に活動の場を求めたのは、ふるさと山形の近くで仕事をしたかったから。いま住む大町はかって御譜代町と呼ばれ、米沢から伊達藩につき従ってきた商人たちのまち。父方が高畠の出身ということもあり、大町にはとても親近感を覚えるという。