日々仕事に追われていると、世間を見る自分の視野が非常に狭くなっていることに愕然とする一瞬がある。
これで良いのかと疑問がわいてくる。別の世界も見てみたいと夢も積る。仕事を持つ人間なら誰でも一度は経験する心の叫びのようなもの。菊地さんも同じ思いに駆り立てられた時期があったという。そして40才を迎えた年に18年間勤めた会社を辞めた。
「子どもがまだ中学生と小学生の頃でした。次の仕事の当てがあったわけでもないのに、ずいぶん無謀な決断だったと思います。」と語る菊地さん。しかし人生は本当に面白いものだ。充電の時期を持ち、無の境地になったとき、向うからチャンスが巡ってきた。それは協力工場からパンを仕入れて、宅配する仕事の話だった。パンは作れなくとも売ることは出来る。心に響くものがあった。平成元年菊地さんと営業社員・事務員の3人で現在の仕事の原点になるパンの宅配業がスタートした。その後平成2年からは、大手スーパーのインストアベーカリーとして出店を開始、順調に業績を伸ばしていったという。平成17年からは事業の3本柱として郊外型路面店の多店化もスタート。「石窯パン工房パンセ」の名前で、泉区の南中山店・宮城野区の福室店・さらにこの4月28日には若林区に遠見塚店がオープン。エントツのある手づくりパン屋さんとして人気を集め、平日でも女性・男性問わず客足が途切れない繁盛店になっている。
「石窯パン工房パンセ」のこだわりは、焼きたて、揚げたて、作りたての3たてが基本。東北では初めてのスペイン製石窯を導入しているため外側はパリッと、中がモチッとした絶妙な食感が人気になっている。また天然酵母や塩(沖縄産)・水(生体エネルギー)・卵(色麻町産)・アズキ(北海道産)などの食材も厳選し、揚げ油にはピュアひまわり100%オイルを使用するなど食の安全にも気を配っている。
明るい店内はオープンキッチンになっており、作りたてのパンが次々と並べられるのでお客様はいつ来ても出来たてが選べる。80種類ある商品の中でも自家製手づくりルーを使ったカレーパンやメイプルラウンドパンが大好評なのだとか。お天気が良ければ緑に囲まれた外のテラスで気軽に味わうことも出来る。うれしいのはコーヒーの無料サービスがあることだ。こちらも挽きたて、淹れたての熱々で香り高い一杯を自由に楽しむことが出来る。4月28日にオープンの遠見塚店には、イートインのコーナーも誕生するのでその場で美味しく頂くにはますます便利になることうけあいだ。
たった3人でスタートした会社が今や従業員200名の会社に成長した。現在でも初心忘るべからずと菊地さんが実践していることがあるという。それは自ら各店舗を廻り、ひとりひとりに給与明細を手渡ししていること。楽しく笑顔で働ける会社づくりがお客様に喜んでもらえるパンづくりの大切な酵母になっていることを、菊地さんは知っているのだ。