「組織の一員だし、もともと黒子的な仕事なんです。顔写真を小さく掲載できませんか…」。
率直な意見をやんわりと、親しみのある雰囲気で切り出してきた。
「こちらに住んでまだ10年だけど、今は生まれ育った東京よりも、仙台が好きになりました」。
夫の転勤で移住し、現在の会社に入社。専門のマーケティングを生かし、藤崎百貨店の店舗構成や販売促進、
商品開発、広告制作などに携わってきた。数年前の本館地下1、2階の食品売場改装、藤崎アネックス一番町
オープンでプランニングを担当。また50代の女性をモニターに募り、『大人が街に還ってくる』といった企業
メッセージを打ち出し、反響を集めた。一方、社外の公的な会議にも参加し、地域振興について積極的に提案。
こうした活動のダイレクトな手応えに、充実感を感じるという。
「地域の中で自分を実感できるのは素晴らしいですね。東京はもちろん神戸や西宮にも住みましたが、
感じられなかった。これは都市のサイズではなく、地域性でしょう。仙台には、一般市民が市政に参加できる土
壌が育っているように思うんです」。こうした言葉が社交辞令でなく本心であることは、初めの印象と変わらない
、丁寧で親身な話しぶりから伝わってくる。それに、数年前に夫が東京に戻ったにも関わらず、一人で仙台に残り、
仕事に打ち込んでいるという現実からも然りである。
趣味は「百貨店。根っから好きなんです」。好きなことを仕事にしてこそ頑張れ、打ち込めるという。
「余暇は百貨店巡り。自分も顧客になるし、他のお客様が買い物する様子を見ているのも楽しいんです」。
僅かにいたずらっ子のような表情を浮かべた笑顔が輝く。ここまで入れ込んでいて、マーケティングのエキス
パートとなれば、今の仕事は天職というほかないだろう。
仕事もプライベートも『他人あっての自分』が信条。「人間は一人勝手ではいけません。
自分も他人も良くなることを考えなくては。『顧客志向』という言葉も、お客様を大事にするだけでなく、
お客様と企業が共にプラスに向かうことなんです。私がこうしていられるのも、家族の理解があるからで、
お互いに高め合うことを常に考えていたいですしね」。大きな瞳が語りかけてくる明解な論理に、聞く者は心地
よく引き込まれ、頷くばかりだ。
今後については、「東北に住む私たちがより豊かに暮らせるよう、産業振興や情報発信の部分でお手伝いができ
ればいいなと思っています」。本人曰く『若葉マークが取れたばかりの仙台人』だが、なんのなんの、僭越な
がら『はえぬきの仙台人が束になってもかなわない、才色兼備で魅力的な仙台人』の称号を進呈しよう。