スーツ姿を一分の隙もなくビシッと決めている。しかも、歓迎の微笑がごく自然で柔らかい。持って生まれた才なのか、
環境のなせる技なのか…?いずれにせよ身のこなしが流れるように美しい。
母親が創立した洋裁学校の事務を大学在学中から手伝うようになり、さらに東京の文化服装学院へ学生として通った。
「師範科の技術専攻、男子は珍しい時代でした。昔は縫うことを重んじたから、背広や婦人服は3年間で75着も縫いましたよ」。
業界が広がった今は、材料学やマーケティングなど、実技以外の課目が増えた。
「昔に比べ今の学生はセンスが抜群にいい。ただ手先が不器用で根気が足りない。現代っ子全般にいえましょうが、
専門教育のほかに人材教育も必要ですね」。実技の鍛錬はもちろん、感性を磨くには「良いものを見ること」と、古典
も含めた芸術鑑賞を課題に取り入れている。「この厳しい時代でも、ファッション業界にはチャンスがあります。
一人の人間の才能が、何十億、何百億のビジネスを成し遂げたりする。夢が広がりますよね」。教育や業界に向ける
情熱がひしひしと伝わってくるが、柔和な表情と話しぶりはどこまでも崩れない。
「顔は生き方を表現するもの。いい仕事をしている人はいい顔をしている。人に見せるためではなく自分のために、
いい顔になっていきたいですね」。物腰ソフトな中にも、芯の通ったリーダーシップが感じられる。「こだわる心とこだわら
ない心の両方を大事にしたい」。主義主張など、ここぞという時は徹底的にこだわり、時に応じてこだわらない自由な発想を生
かしたいという。
多方面で意欲的に活動している。「趣味はスポーツ、釣り、旅行、音楽、読書…料理もやります。アイデアを出すのも好き。
コンピュータで企画書を作って、それをきちっと運営させるのも好き」。近年はみちのくYOSAKOIまつり大会の会長と
しても活躍。「若者をサポートして、仙台をもっともっと盛り立てていければ最高ですよね」。相変わらず流暢で自然体。それ
がなんともスマートだ。
『小笠原流礼法総師範』という肩書きに触れるに至って、やっと納得。日本古来の武家の礼法を宗家直伝で収得、
昨今は講演やミス仙台の指導などにも忙しいという。「伝統を知るのも楽しいし、今風にアレンジした作法やマナーは
役立ちますよ」。その立ち居振る舞いは、まさに免許皆伝の技だったわけで、改めてお見事!!
幅広く、奥深く、しなやかに…。静かな笑みの向こうには、新旧の時代にまで行き交う、自在な魂の力がみなぎっ
ているに違いない。