持ち前の上昇志向と先見の明をもって若くして人材派遣会社を興した事業家であり、また彫刻家でもある。さらに今年発足したばかりの『みやぎ会津会』の初代会長も務める。経済・文化の両面に渡って、東北から風をおこす人でもある。そんな須佐さんのエネルギッシュな生き方の原点は、生まれ育った奥会津の自然や伝統、文化に培われてきたものに違いない。四季ごとに移り変わる森や山や川。色とりどりの木の葉や花の香りにつつまれて育った。幼少の頃は木の枝や竹、蔦を使って遊び道具を創り出すのが大の得意だったという。中学生の頃から彫刻家になりたいと夢をふくらませていたが、明治生まれの父親に「絵や彫刻でメシが食えるか」と真剣で一喝されたという。こんな迫力あるエピソードにも会津らしさが感じられる。
大学卒業後商社に就職するが、5年で退職。独立を決意し、28才の時に人材派遣会社東洋ワークを創立する。まさに有言実行の人である。独立する際に、ふるさと金山町の人口(当時は約3500人)よりも多くの人を使う会社にしてみせると話したところ、「そんな大風呂敷を広げるな」と、同級生に笑われたそうだ。ところが時代の潮流に乗った会社は、今や日本全国に50拠点、海外に6拠点を有し、稼動派遣社員は約4000人、フロントの社員が250人という企業に成長を遂げた。
日本、中国、インドなどアジアの大学生、大学院生と直に接している須佐さんだが、ここ10年ほど、心を痛めていることがあるという。それは、日本の若者と中国やインドなどの若者との間に勤労意欲やハングリー精神の差があまりにもあり過ぎることだ。中国やインドの学生たちは未来のプランをきちんと立て、15才から25才まで猛烈に勉強し努力する。それに比べて日本の大多数の学生は、出世を望まず、ほどほどに収入を得て有給休暇をたっぷり取って楽しく暮らしていければいい、そんな甘い考えの持ち主が多い。この差が10年後の日本を根底から大きく変えてしまうのではないかと危惧しているのだ。
寝ても覚めても仕事のことばかり考えているという須佐さんだが、好きな彫刻をしている時が一番心が休まるらしい。「私の場合は休肝日が彫刻の日。週2回を創作の日と決めて、1年に1体を目標にこつこつ楽しみながらやっています」と語る。数々の作品には家族への想いや慈愛が満ちていて、須佐さんの人柄が伝わってくるようだ。
今年、『みやぎ会津会』を有志の方々とスタートさせた。自分を育ててくれた郷土に恩返しがしたいという気持ちからだ。会津の人々の結束はもとより、会津の良さを宮城の皆さんにもっと知ってほしい、また会津から宮城に来ている若い人に支援や激励を送りたいと思っている。発足時に集まった会員は130名。3ヶ月に一度の定例会を通して親睦を深め、ふるさと会津への想いを次の世代に繋いでいきたいと願っている。
※みやぎ会津会に関するお問い合わせは 東洋ワーク TEL.022-225-5052 へ。